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枯れ葉の流れ着く先 【幻:前編13】 「Fictoin Story」 [小説(story) Fiction]

☆=ストーリ【Story12】からの続きです、是非下欄【Story13】をお読み下さい=☆

   《鶴見医院・ヨシ子実家へ》

 最近俺の顔から笑顔が少なくなった事をヨシ子は感じていたのだろう。 「ねぇ話変るけど 私達もどんな小さい事でも不満やストレスを溜めないようにしようね」 「あぁー 解っているよ」 「それには話し合いをね、どんなにくだらないと思う事でも聴きあうようにしょうね」 やはり俺は苛立っていたのか声が大きくなり 「俺ってそんなにくだらない!」 この所 何が原因か解っているが 何をすれば良いか俺は最近苛立っていた。

 やはり年上とでもいうのか、ヨシ子は怒りを表すどころか優しく説明し始めた 「リュウ これってね、私達にとっても真剣な話なの!、私の患者さんの中に馬鹿げた事を言っている人がいるの、始めはね聞き流していたけれど その人は本音を素直に言えなく わざと馬鹿らしい事を言って誤魔化していたのよ、 彼本当は手術 恐くて恐くてたまらなかったの 解ってくれって訴えていたのよ、 素直に言ったら良いと思うのに言えない人もいるのよ。 だから理解するために心理学が必要と思ったの」

 患者の話にすり替えているが 本当は俺がレースを辞めたく無いのに、ヨシ子に遠慮して本当の事言えずにいるのではないか、本当は私が足を引っ張っているから 力になりたいのにどうして良いのか解からず 俺以上に苛立を押さえているようだ、

 俺はヨシ子の気遣いに 反って苛立ちが増し 「何に! 俺を分析しているだよ!言たい事が有るんなら、そんなに遠廻しに言わないではっきりいったら如何なんだ!」 ..少し言い過ぎたかと思い慌てて補足した 「・・解ってるよ!」ヨシ子から学んだ事沢山有るし助けてむらっているよ、何時も本音で話してくれるから俺も本当にそうしてるよ だからもういいんだよ!本音は これから莫大な資金が必要で一流企業のスポンサーの後押しか おぼちゃんでなければ と心の中で思ってはいるものの言葉には出来なかった

 ヨシ子は驚いた顔で俺を見詰めたが 直ぐ様ほっとした顔で 「私もよ リュウと同じ! やっと安心して自分でいられる場所を見つけたの だから..」 何か虚しさが収まらず 少し強めに「もうー良いからって!言っているでしょう!」 俺は何って天邪鬼なんだ 甘えている事も身勝手な事は解っていているが、あまり優し過ぎるのも腹が立つ!。

 ヨシ子は、私だって如何して良いのか苛立っているのよ、というような悲しそうな顔をして 「本当の所、身内は分析出来ないわ、特にリュウの事になると冷静に判断出来ないし解からなくなるの・・リュウって、凄く甘えん坊だったりファイターだったり、時々変に大人に見えたり、本当に多彩ね、一緒にいて飽きない人、・・どんな時でも、いざと言う時にリュウは必ず私を守ってくれるから」..「でも私に遇いさいしなければリュウはレース続けていられたのよ、私解っているの!でも如何したら良いのか判らない」 悲しそうに訴えるような目で俺を見る。

 「だから 諦めるしか無いだろう、ヨシ子のせいではないよ 違うって言ってるでしょう、その気遣いがくどくて腹が立つよ」 可哀そうな言い方をしてしまったし俺自身も腹立って惨めさを一層感じる、ヨシ子も仕事や人生に目的を持った人だから目的を失った俺の気持ちが判るのだろう、ヨシ子はそんな俺に戸惑いを見せ 何も出来ない自分自身に怒を感じ 両手に握り拳を作り耐えている様子で 「でも事実よ 何んにもして上げられない! 私ってだめね!」 「なに言っているの!充分助けてもらっているよ、無駄な時間を過ごした 俺が招いた事だよ」

 急に俺の目をきりりと見詰め 「リュウ無駄な時間って!美奈子さんの事?そんないい加減なお付き合いしたわけでは無いでしょう!それに他人のせいにするなんて!そんなリュウを選んだ私も侮辱する事になるのよ!」 なんだしっかりしているじゃん 全く指摘の通り 「ごめん!説明のしかたが間違っていたよ、自分で選んだ道だから自分で切り開かなくては駄目だと解っているよ、でも どうにもならない事もあるんだよ」。

 引き続きレースーについて説明した・・ 「カーレースはそんなに単純な物ではないよ、大勢の支えてくれる人があって成り立っているんだよ、レーサーの才能が有ってもスターに成れる人はほんの一握り、それも俺の実力の無さと運だよ!・・ヨシ子に影響されて辞めると言っているのじゃないよ。

 ・・自分だけは違うと思って始めた才能のある人達が消えていった現実を沢山見てきたよ!何処の世界でも成功出来るのは、ほんの一握り。 俺も其の一人、悲しいかな消えていってしまうんだよ。 だからヨシ子には関係なく其のときが来ただけさ!」 言葉の最後は投げ遣るように言い放った。

 本当は何時もヨシ子が俺を護ろうと思っている。 それなのに、このやりきれない気持ちをヨシ子にぶちまけ甘えているのか・・俺は内心、ヨシ子に心配掛けて御免と思う気持ちが有りながら、それとは裏腹に投げ捨てる様に言葉を吐いていた。

 「俺の事はもう良いよ!決断の時が来ただけさ!。 気持ちが暗くなるから此の話やめよう、如何にもならない事考えるだけ無駄だよ」..「そうだ!明日、海斗に会いに行くよ」 ヨシ子は自身に呟く様に聞き取れない位小さな声で 「本当にいいのかしら?今は何を云っても・・」。

 暫く沈黙の後、ヨシ子は俺を伺う様な目で尋ねた 「海斗君に会った後、私の実家に一緒に行ってね、結婚式の事話したいから」 俺は何故か気の無い返事をした 「あぁ」 ヨシ子は力を入れ語尾を強め 「本当に良いのですね!」

 そうか、それで俺の本当の気持ちを知りたっかたのか! 「良いに決まっているだろう、ヨシ子を失える訳が無いでしょう」 本当は俺のはっきりした答えが欲しかったのだろう、嬉しそうな笑顔で 「うれしいわ!本当ね?ありがとう」 もう一度確かめるように 「いいのね!」 「うん・うん」 俺は黙って頭を2度ほど小さく立てに頷いてみせた。

 なんだか俺は息が詰まりそうで、話題を変えた 「それより、海斗に何て言おうかな、レース辞める事がっかりするだろうな、俺、海斗がストライキ起こした時、最後までやれって威張って言ちゃった」 ヨシ子はサラリと 「事実だから仕方ないじゃない、誠意を持って話してみる事ね」 なんだ!アドバイスは無いのか、・・それもそうだよな 「そうだよね、其れしか無いか。 解ってむらえるか判らないが話すよ」

 「リュウって、なにか海斗君の事、自分の子供みたい、お願いしたの私なのにね」 お腹を擦りながら 「将来、此の子にもきっとそうでしょうね」 自分の子供の事もそれ位考えよと俺に云っているのかな?母親の心なのか?

 本音はまだ会っていない俺の子を理解出きる訳が無い 「そうかな~ぁ?良く判らない」 自分の子供が欲しくてたまらない人も居るだろうが、本当に子供の事を考えずに突然出来てしまった人はどの様に受け入れていくのか?ただ己の行為の責任感だけで流され、其の内愛情が芽生えるのか? 俺の戸惑った気持ちを察したのか 「まだ、リュウは実感ないものね」 もう父親の自覚持ちなさいよ、では無く、本当にヨシ子の顔は皮肉では無い様だ、俺を気使っての事だ、そんな風に感じる、

  俺自身が拘っているのかも知れない、頭の中で考える倫理感と実際に起きた事とは違ってくるのだろうか?俺は皆と違って冷たいのか?、そんな事は無いだろうが今この時期、子供によりもっと俺の道を閉ざされてしまうのではないか、一体世の男はどう思い感じているのだ本音が知りたい?・・いや俺自身の本音に問いかける事が恐いからか!

    《病院にて》

 翌日、スクールでの販売用の子供用Tシャツを持って海斗の病室を訪ねた。 海斗は疲れたのか静かに眠むっている、ベット横の来客用補助椅子に座り、暫く寝顔を眺めていた、..なんって、汚れの無い顔か!、誰かが云っていたな.. 「昼間は散々困らせるのに寝顔を見ると全て忘れ幸せになれるわ」 って..そんな言葉が浮かぶ..。

 海斗は俺の気配に気付いたのか 「リュウ、来ていたの」 俺は片手を軽く上げ 「よぅ!」 海斗は嬉しそうに 「ヨシ子先生から聞いたよ、一番になったんだって!凄いね、・・ねぇねぇ、話し聞かせてよ」..俺の手を取って揺すっている..俺はレース辞める事、なんって話すか迷っていた。 取り執えずTシャツを海斗に渡し 「今回急いで帰って来たから、お土産此れだけだよ」

 「いいよ、リュウが一番になれた事が一番嬉しいお土産だよ」 思わず海斗の頭に手を置きグルグル撫でまわした 「なーに、生意気な事云って!」 頭を揺すって俺の手を避けながら目を丸く見開いて 「だって、リュウの一番のファンだから」 自分の子供で無くてもこの様に接して話し合い、初めて愛情が湧いてくるものだ、まだ見ぬ我が子にしてもそう思う、確かにヨシ子のお腹の中には居るだろうが会わない内に一体何を感じるのだ、俺って間違っていておかしいのか?

 ..丁度、ヨシ子が定期診断の時間だろう白衣姿で入って来た、ヨシ子と顔を見合わせたが..俺は海斗に話を続けた 「嬉しいけど、海斗はファンより一番の友達だよ」 ヨシ子、海斗の脈を取りながら 「あら、先生がリュウの一番のファンだと思っていたのよ、海斗君が一番だったんだ」 海斗、得意そうな顔をして 「そうだよ、一番の友達で一番のファンだよ!」

 俺とヨシ子は顔を見合わせた、リュウちゃんとあの事を話しなさいと云っている目だ..俺は海斗を見詰め 「なー海斗・・俺レース辞めるよ!」 暫くキョトンとした顔で 「え!どうして、どうしてなの!辞めたら嫌だよ!」 ..こまったな!なんて説得したら良いのか?思いも見つからなく言葉に詰まっていた..。

 その時、浩子さんと海斗の父親(長崎 伸男)らしき人が病室に海斗の見舞いに入って来た、そのまま海斗に歩み寄りながら 「海斗!うわまま言ったらいけないよ!」 そのまま海斗の意見も聞かずに俺に向き直り 「龍崎さんですね、お世話になっています・・噂は聞いていますよ!」 語尾がきつく何か文句が有りそうな言い方だ 「いいえ、此方こそ」 海斗は父親を睨み「お父さん、なんか何にも知らないくせに!」 父親は冷たく 「海斗は黙っていなさい!」

 ..俺はレースの事も有って何かもやもやしていた、誰でも良い無性に当たり散らかしたかった、..俺が腰を上げ反論を言う気配を察したヨシ子が素早く俺の手を握り押さえ遮るように前に立って、彼に向かって 「別の部屋に行きましょう、海斗君後でね」 海斗は何か父に云おうとしたが俺に向きを変え 「リュウ後で絶対きてね、聞きたい事があるの約束だよ!」 軽く頷き 「おーぉ、後で」

 同じフロアーの患者相談室に俺と長崎さん三人が案内され、ヨシ子は厳しい顔で相談室のドアーを開け中のテーブルを手の平で示した 「さー皆座って、リュウも浩子さんも、海斗のお父さん長崎さんも座って下さい、さーリュウもよ!」 ヨシ子は皆がテーブルを囲んで座るのを見届け 長崎さんに向かって 「..お父さん、如何したのですか?海斗君に訳も聞かずあんな言い方して、如何したのですか!、其れで無くても海斗君は自分の事で怯えているのですから!」

 「すみません、何をやっても..もうこれ以上如何したら良いですか..」・誰も返事は無かった・皆なぜという顔で長崎さんを見詰めた・「私もう駄目なんです、浩子は全部私の責任にして」 ヨシ子呆れ顔で 「一体如何したのですか?第一に海斗君の事を考えて下さい」 浩子達夫婦は別居状態が以前から続いていたようだ、浩子が夫を睨み付け 「この人、愛人にも捨てられたのよ!、それで私の処に戻りたいって、今まで散々私を蔑ろにして、今更・・もう家庭裁判所に申請出したのよ!何があっても、もう一緒には住めないわよ!」 と尾びを高めた、

 長崎さんは素早く立ち上がり両手の平で机を叩き、派手な音が響いた 「なに云っているんだ!今までどんなにして上げても、何時もだめよ貴方が悪い、何時もそれだけでしょう、いい加減嫌になるよ!」 ヨシ子は当惑した様に 「ちょと待ってください、浩子も長崎さんも、今はその話と海斗君の事は別でしょう、これからは海斗君の前で言い争いは止めて下さい!」 其れより長崎さんの ”どんなにしてあげても” 言葉を聞いてがっかりした ”してあげる” のか?考え方が違うなと俺は思った。

 ヨシ子は二人を宥める様に 「とにかく、長崎さんも浩子も座って下さい、リュウもよ」 長崎さん怒りが収まらない様子で 「何かと言うと、浩子はリュウさんリュウさんなんだから、いったい貴方は浩子のなんですか!」 今度は逃げ場を求め俺に矛先を向け話題を変えた。 

 俺が反論の為、立ち上がりそうな気配を感じたのか、ヨシ子は又俺の手を確り掴んだまま俺を制して、長崎さんに向かい厳しい声で 「貴方は人の好意も分らないのですか!自分のして来た事を何と思っているの、責任転化して!その反省もなくなんだって言うのですか!少しは海斗君の事父親として考えたらどうなんですか!今は皆さんで海斗君の事を考える時でしょう?」・・「もし医療費の事でしたら、院内にも市や県に相談できます、落ち着いて下さい」 よほどヨシ子も呆れ絶えかねた様子、こんなに激しく荒い言葉で話す事を今まで聞いた事わ無かった、やはり男社会で生き抜いて来た人だ!。

 長崎さん再び席を立ちながら 「もうほっといて下さいよ!・・誰も私の事など解ってくれない、本当に疲れてしまいましたよ!」 今度は急に言葉が荒くなり 「..先生、あんたも気を付けな!龍崎さんに裏切られるから!」 なにお!また話を変えて!怒りがこみ上げる、ヨシ子は俺の手を確りと握り押さえる様に制し、俺の顔を見てヨシ子は顔を小さく横に振って”駄目よ”と合図し、

 次に長崎さんに顔を向けるとヨシ子は厳しい声で 「話をそらし責任転換しないで下さい!、私達に何が有ろうが貴方に関係無い事、それに貴方夫婦に何が有ろうと海斗君に対して責任が有るのですよ!、もう少し父親として考えて下さい!」

 浩子さんも声を荒立て 「あんた!何言ってるの!負け犬の捨て台詞の様な事云って、貴方と違うのよ!、恥ずかしいわ!本当に海斗の事考えてよ」 長崎さんは、怒りを抑える様に頭を静かに左右に振り 「これ以上如何すれば良いんだ、お前は何時もそればかりだ!」

 浩子は怒りの頂点に達した様に 「全く無責任なんだから、今更許せません、もう家に入らないで下さい!荷物は何処へでも送ります!、鍵を置いて行って!」 浩子の凄ざましい言いかたに、長崎さんポッケトから鍵を取り出しテーブルに投げ出し、向きを変え乱暴にドアーを開け、足早に出って行ってしまった、

 ..だれも後を追う気配も引き止める事もしなかった..、浩子落胆したように 「御免なさい、何と言う人なんでしょう、本性が解ったわ、これで本当に私の心もはっきりしたわ」 ヨシ子心配そうに 「本当に其れでいいの?冷静に考えてみて、海斗君の事、冷静に話合わなくていいの?呼び戻しましょうか?」

 浩子怒りが収まらない顔で 「私は冷静よ、ヨシ子には云えなかったが長崎の女性問題で随分まえから私達別居状態だったの、もっと早く決めれば良かったと思っている位、今は何を言っても無理よ話にならないわよ」

 ヨシ子宥める様に浩子に向かって 「とにかく海斗君の事少しも考えていないのね、浩子、今後二人の事は必ず弁護士を通して話合う様にね、..今日は浩子、長崎さんに会わない方が良いでしょう、私の実家に泊まって行ったら?私たちも行く予定だから、お母さんに電話するからそうしなさいよ」。

 俺は出て行った長崎を思って 「長崎さん、荷物こまるでしょう?」 浩子リュウ解っていないのねと言う様な顔をして 「いいの、もう殆んど長崎の必要な物あの人の処へ行っているのよ」

 ..彼に怒りを感じたが、背中を丸め足早に立ち去る後姿を見て..、何か哀れさを憶えた嘗ては愛し合った二人だろうに。 疲れきっても誰にも理解されず、嘗ての俺を垣間見る様で少しは同情も沸き気持ち解らないでもないが決して彼の見方になれないと思った。 そして彼の邪推した事は何も無かったが、彼の推測通り俺に少し下心も有って心も痛んだが、俺もそうとう頭にきてヨシ子の制止が無かったらぶち切れるところだった。

 俺も落ち着いて 「ヨシ子、俺の云いたい事全部言ってくれたよ、俺、海斗と約束したから病室に行くよ」 ヨシ子まだ心配そうに俺を見詰め 「リュウも今後何が有るか判らないから、海斗君の前で争いは絶対駄目よ」 「あぁ、解ったよ」 「私達少し話が有るから、少し、してから行きますから、お母さんに浩子が今日泊る事連絡するわ」。

 ..もっと冷静に海斗のお父さんの立場からも聞いてみないと、優しいが故に不甲斐ない自分に誰よりも心を痛め、疲れ切ってしまっているのだろう..嘗ての俺を見ている様であり、一層、強い彼を勝手に期待し、勝手に裏切られた気持ちになっていたのかも知れない、彼は本当にボロボロになっていたのだ! 今少し冷静なり、本当は俺が理解者になり手を差し伸べ聞かなければならなかったのでは?..いや何が有ろうが許せない、何かやるせない思いだ。

 ..海斗の病室に戻り..俺の心の中は複雑で自分自身の怒りと彼に対しての怒りで一杯、心の拳を何処に下ろすか迷ったまま海斗の病室にもどった、海斗の顔を見ながら心鎮め.. 「お父さん、何か仕事が有るからって先に帰ったよ、海斗に早く元気になって、て言っていたよ」

 海斗厳しい目で俺を見て 「そう、リュウの顔なんだか恐いよ!..お父さんの事なんかいいよ..其れよりレースの話して」 俺は顔の強張りを緩めたつもりであったが、海斗に指摘されてしまった 「そうかごめん、海斗!..お父さんが一番心配しているんだよ」..何で、こんな事言わなければ.. 海斗は拗ねて膨れ顔で 「いいよ!、もう止めてよリュウまでそんな嘘言わなくていいよ!」

 海斗は全て解っている 「どうしてそんなふうに思うの?、海斗のお父さんだよ」 ..本当は海斗も充分知っているんだろうが、どんなお父さんでも愛されたいよな..この俺がこんな事云うなんって!.. 「海斗が早く良くなる様に、海斗に会いたいけど我慢して一生懸命働いているんだよ、解って上げないとお父さん寂しいよ」

 海斗は涙目になり 「うん、もうーリュウ良いから!もう云わないで、やめてよ!」 ..意外と大人になっているかも.. 「そうか悪かったね、もう言わないよ..」 子供の目は鋭いな全て解っているようだ、

 俺は意を決する様に 「あのさー 、さっきも話したけど、海斗、俺レース辞めるよ!」 「なんで!海斗否だよ!リュウ、最後までやれって言ったじゃない!」 あんなに期待させって..何の説明も無く納得出来ないだろうな.. 「ごめんな!約束やぶって、リュウは最後まで力出し切ってもう走れなくなってしまったの、その代わり海斗走ってくれよ」

 「そんな事出来ないよ!リュウが海斗に云ったでしょ」 「海斗本当にごめん」 ・・まだ納得出来なく膨れ顔でいる、俺は無視して 「あれ、リュウにレース・カードライブするって約束したでしょう」 「だって、リュウがやめちゃうでしょう、嫌だよ!」 「大丈夫だよ、レースは辞めても海斗は特別、リュウが教えてあげるから」 きっとリュウは変える事は無いと判ったのか? 「..本当?約束だよ」 「あぁ..」

 ヨシ子達が入ってきた 海斗は不満そうに 「ねーねーお母さん、リュウ、レースやめちゃうんだって」 全然納得しない様子..俺が悪いんだ..あんなに期待させちゃって.. 浩子さん海斗を無視して俺に 「そうなんですか、ヨシ子も此れで安心ね」 海斗なお膨れ顔で 「そんなの!ちょとも良くないよ!、リュウはレーサーだよ!..いやだよ!..」

 俺は謝る事しか思い付かず 「海斗ごめん、本当にゴメンよ」 海斗は俺の何かを差したのだろうか、少し収まり「..でも、その代わりリュウがね、海斗に教えてくれるって」 浩子優しく答え 「そうなの、良かったわねー、先生の言う事聞いて早く元気にならなければ..」

 「うん、だからリュウ、時々来てね約束だよ!」 俺は親指立て 「ごめんよ!俺の代わりに走ってくれるよな」 「うん、頑張るよ!」 「お母さんと先生の云う事聞いて頑張れるかな?」 「うん、リュウ絶対来てね約束だよ」

 俺は以前海斗が聞きたい事が有るからと、云った事を思い出した 「海斗、俺に聞きたいってなんだ?」 海斗はお母さんの顔を盗み見して 「今日は良いよ!」 俺は察して 「そうか、またな」 海斗は子指を出して約束を求めてきた 「おぅ」 小指を出して応えた

 「それで海斗、今日はリュウ達、海斗のお母さんも一緒に、ヨシ子先生のお父さんとお母さんに会いに行くけど」..「海斗・・もう行かなくちゃぁーならないけど、いいよね?」 「うんわかった、でもリュウ..絶対来てね!」 ..海斗なりに、レースの事も含め何か感じとった様だ.. 俺はほっとして

 「当り前だろう、海斗!、海斗はリュウの大事な友達でしょう」 海斗の頭をぐちゃくちゃに、両手でかき回した、顰め面だが嬉しそうにしている 「ねー、やめてよ!」 俺はもう一度親指を立てた、海斗も心なしか指を立てた手に元気が無かったが少し元気を取り戻したようだ、

 海斗、消え入る様な声で 「..友達より..」 俺は海斗の前にしゃがみこみ目線を合わせ 「海斗、はっきり云えよ..」 とっさに心無く云ってしまったが、俺には海斗が何を云をとしたか解っていた 海斗目を伏せ 「うん、..何でも無い、もう良いよ、..本当に来てね!」 俺は、こみ上げるものがあり声にならず、ただ頷き海斗に答えた、

 ..俺は海斗の親父にはなれないよ、でも親父のまね少しは..、 海斗は漠然とそれなりに薄々は気付ている、近ずく死の恐怖に怯え戦っている、俺の話に乗り夢中に成る事で少しでも迫り来る現実の恐怖を忘れ生きる希望を..子供なりに感じているのだろうと、それは後髪を引かれる思いであった、海斗を説得出来ないまでも、俺は海斗と向き合った海斗の父親にもそうして欲しいと思った..、

 病室を出、三人で車に乗り込みヨシ子が緊張した顔で 「さっきは、リュウの顔凄く恐かった!止めるのに必死だったわ!」 浩子は、吐き捨てる様に 「あの人は自分より強いと思った人には途端に変わるのよ、だから黙って出て行ったのよ、あんなに卑怯でだらしない人と思わなかったわ、離婚決めて良かった!」 ヨシ子は俺の顔を見、徐に浩子に 「絶対に直接話しては駄目よ、必ず弁護士を通して交渉するようにして、後で後悔しないようにね」 浩子まだ、興奮が収まらない様子 「解かったわ、今日は御免なさい」

 「本当に、ヨシ子と浩子さんって、何時も正反対だね一人は結婚一人は離婚、不思議だよ」 ヨシ子慌てて、なんて事を言うのと云う様に 「リュウ不謹慎よ!」 浩子冷静な声で 「いいのよ、本当の事だから気を使われる事の方がいやよ」 そんな話の中ヨシ子の実家に付いた。

    《ヨシ子の実家にて》

 車の音で分ったのだろう、ヨシ子の母が玄関先で向かえてくれた 「浩子さん随分久しぶりね学生以来かしら、とにかくおあがりなさい」 浩子沈みがちな声で 「はい有難う御座います、お邪魔させて頂きます」 義母は明るく装い 「堅苦しい事は良いから、それからリュウさん余り来てくれないから、お母さんの事嫌い?」 「え!・・・」 俺は義母の突然の言葉に返事につまった、ヨシ子慌てて俺を庇い 「お母さん!リュウは車のレースで忙しかったの」 俺は頭を掻きながら素直に 「ご無沙汰して御免なさい」 義母は俺を見詰め甘える様な声で 「寂しかったのよ、さーぁ早く上がりなさい」 俺は嫌味では無い義母の何気ない言葉に本当に嬉しく思った。

 三人は居間に通され、大先生(義父)と受付の奥村さんが待っていた 「リュウ君、たまには顔を出しなさい、お母さんが寂しがっているよ」 「すみません、此れから伺うようにします」 ヨシ子急いで言い訳した 「お父さん、リュウはねレースで忙しかったの、今回優勝したんだから」 義父は俺に向き直り驚きの顔をみせながら 「ほーう、ヨシ子には聞いていたがそれは凄いね、良かったおめでとう・・まーぁ座りなさい、浩子さんもどうぞ」

 ヨシ子両親を安心させる為に 「来年まで、これでリュウの出ているレースは無いそうよで、それにリュウは来年からのレース辞めるか考えているようよ」 義母、急に明るく嬉しそうに 「本当ですか?良かったわ!何時も心配で心配でたまらなかったわよ」 ヨシ子俺の気持ちを充分しっているから、バツが悪そうに 「お母さんたら!よして」 慌てて嗜めた

 俺もヨシ子に助け舟を出し 「皆さんに、ご心配おかけしてすみません、もう自分の夢だけを追っては居られませんから」 社交とはいえ、俺もよく言うよ俺自身思ってもいないのに! 義母嬉しそうに 「此れで安心本当に良かったわ、此れからは、そんなかたぐるしい言い方をせずもっと甘えて来て下さいね」 其方こそ、如何にも綺麗過ぎる言葉ずかい、よそよそしく感じる 「でしたら義父さんも義母さんも、リュウと呼んで下さい」 二人は其の言葉の意味を十分解ってると思った。

 義父は中を取り持つように話題を換える 「まあリュウ君、いやリュウと浩子さん夕食にしょう、坂下の焼肉屋さんからお肉など先ほど奥村さんに運んで頂いたから、さあ頂こう」 義父は焼肉が若い頃から好きだったのだろう、本格的にダイニングのテーブルは埋め込みの焼肉用ガスコンロが付いていてテーブルの上にからも下からも換気装置が付いている、

 たぶんヨシ子が俺の好みを話たであろう、肉は骨付きカルビを筆頭に沢山の肉や野菜、サンチェ、センマイも有る、みんな俺の好きな物だ、義母は名前を呼ぶのに恥ずかしげに 「リ、リュウ、貴方の好きなセンマイもサンチェも有りますよ、食べなさい」 たぶんヨシ子に聞いていたのだろう、

 「はい、どうもこれ大好きです」 やはり好きな食べ物を見ると自然に笑顔がでる、 義母は嬉しそうに俺を見て、浩子に目を移した 「それと浩子さん、学生の頃の様に今日はヨシ子の部屋で休みなさい、用意してありますから」 浩子懐かしそうに辺りを眺めながら 「宜しくお願いします」 義父は肉を網みに乗せ焼き始めたが、ただ喜んではいない 「リュウ、レース辞めて今後は如何するのだ?」

 「あ!はい、今まで契約でベースに雇われていたのですが、公務員として正式雇用をお願いしてあります、返事は未だですが多分大丈夫です」 義父は肉を返しながら、安心したように 「ヨシ子も一安心だな、ヨシ子体の方は順調か?」 ヨシ子のお腹に目をおとす

 ヨシ子の本音であろう 「ええ大丈夫、順調ですよ、それよりリュウが心配よ無理に好きなレース辞めさせてしまったようで・・」 浩子の気使だろう、慌てて遮る様に話題を変える 「お父さんもお母さんも、もう直ぐお孫さんの顔が見れ楽しみですね」 義母は嬉しくて堪らないように声を大きくして 「ええ、楽しみにしているわ」 ..云った後に気付いたのだろう 「そうそう、海斗君は如何ですか?大変ですよね」

 ヨシ子は自分の仕事以外の事だが、友達として尽くしている 「病院も色々頑張っているのよ、提供者が少なすぎるし想定外の問題が多くて、一つ間違えると諸刃の剣、公平性や提供者側の問題解決が多過ぎるし、人としての問題もあるの法の整備も必要なのよ、リュウも云ってたけど有る事は有るのですが、国で其の家族も保護しないとね、ボランティア団体にもお願いしてありますが、待つ人が多すぎて、..其れと院内に福祉相談室もあり浩子に相談する様に進めたの経済的問題もお願いして有るの」

 浩子は本音であろう 「ヨシ子が居なかったら途方に暮れ如何なっていたか!本当に助かっているわ、..長崎は、いざ、と言う時に逃げてしまう人だって早く分って良かったわ、こんな問題無くても何時か駄目になったと思うわ」 義父やはり重みがある、何か皆を安心させる 「弁護士に離婚の問題だけでなく、まず市や県の相談室で海斗君の経済的問題と移植の件、一緒に相談して頂きなさい、きっと力になって頂けると思うよ、浩子さんそうしなさい」 

 浩子は沈痛な顔で 「はい、行って話してみます、臓器移植は私迷ったんです、たとえ死んでしまった人でも他人の命や臓器をむらい受けてまで、自分の子の命守りたいのか、外国では人の命を奪ってまで売買するとか?私成りに悩み、いくたびも葛藤がありました、其の上拒否反応と戦はなければいけないし、もっと海斗を苦しめてしまうかも、...でも助かる者なら、何としても助けたいです」 よほど苦しかったのであろう、声が震え涙まで溢れていた、暫くその場は暗く沈んだ沈黙が有った、

 .. その雰囲気を消すように、義父力強く 「さぁ、浩子さん食べなさい、其の件に付いても移植団体やボランティア団体が有ります、先ずは力を付けなくては、弘子さんも、もっと食べて!」浩子さんの皿に焼きたてのお肉を置く、きっと義父なら力になってくれる人だと思った、

 ヨシ子仕事の話になるとやはり顔が締まる 「其の件に付いては病院の方からも申請していますから、親として当然な気持ちです浩子さん、市や県の方からもお願いしてむらったら良いわね、さあー食べて」

 この重い雰囲気を消す為で有ろう....ヨシ子は俺を見て、焼肉の網から煙りを出している、カルビを俺の皿に運びながら、ヨシ子にしては雑な言葉で 「腹がへっては戦が出来ないでしょう、ねっリュウ!」 ヨシ子が俺にウインクを送って来る、ヨシ子と俺の隠語になってしまった様だ(戦とは・・俺が冗談で言った愛の営みの事であろう)、

 義母は何も知らずに 「そうよ、昔からその様に言われいるわ、弘子さんも、もっと食べなさい、リュウもよコチジャンも頂いてきましたからサンチェに巻いて食べて下さい、沢山あるのよ遠慮しないで、リュウさん私作りましょうか?」 ヨシ子が事前に話し、俺の好の食べ方を聞いていたのだろう、義母の心ずかいが嬉しかった、 事務の奥村さん慌てて 「私、作ります」 「大丈夫です、俺自分でやりますから」

 叔母さん風の看護師さんは、時々笑顔を浮かべながら黙って聞いていた、奥村さん俺の顔を伺うように 「あのう、後でコンピューター解からない処有るので教えて下さい」 「はい、遠慮無く何時でも言って下さい、急いでいる時は電話でも良いですよ」 「ええ、食べてからで良いですよ、此れから解らなくなったら電話しますからお願いします」

..そして、ヨシ子が結婚式の日取りや場所、本当に身内と友人だけにしますからと報告、義母は招待する人に少し不満があった様子もっと医院や母の関係者をと望んでいたようだがヨシ子が本当に身内だけでしたい事、説得し了解を得ていました、俺は奥村さんと受付に行き、コンピューターの新しいアプリ(application)の扱い方を説明、問題点を修正した、奥村さんゴマ摩りではなさそうだ 「リュウさんて、お嬢さんが選んだ理由が解るわ、頭も良く優しく簡単に直してしまうのね」 「いやー、おだてないで下さい、ヨシ子にたまにコンピューターの扱い聞かれて喧嘩しながら教えていますよ、たまたま工学系の学校だったから、何時でも電話して下さい使い馴れたら楽ですよ」

  《新たなる旅立ち》

夜景部屋.jpg 式の話も了解を無事得て、浩子さんをお願いして、俺達はその夜マンションに帰った 「リュウ、今日はありがとう疲れたでしょう、お父さんもお母さんも嬉しそうだったし、浩子も安心して休めると思うわ」 「俺、兄弟がいるから気が付かなかったが、ヨシ子は一人っ子もっと行ってあげれば良かったね、ごめん、此れからもっと行くよ」 「いいのよ、リュウ今まで忙しかったから」

 「お父さんお母さん、リュウって云いづらかったようよ」 「今まで何かよそよそしくてやっと鶴見家の一員成れた気がしたよ」 「そうね、リュウの気持ち解ったから、家の家族は人を呼び捨てにする事が無かったの」 「・・」 「其のうち馴れると思うわ、リュウコーヒー入れましょうか?」

 「うん俺何か、以前の俺を見ている様で長崎さんの事複雑な思いで、一概に批判出来ないし心苦しいかったよ」 「そうよね、リュウは経験が有るからね・・人って思いがすれ違って難しいものね」

 俺は思いだした様に話を変えた 「話は違うけど、結婚式の前にチームの皆を呼んでお礼と 引退の事話さなければ、ヨシ子何処が良いかな?」 ヨシ子、キッチンカウンターに立ちコーヒー豆を挽きながら 、俺の裏腹な気持ちを感じ過ぎるほど判っていたのだ 「本当に車諦められるの?」 俺は心の中を見透かされた様で腹が立ち少し声を荒げ 「もぅー、何回も云わすなよ!」

 「直ぐ怒るから、本当にそれで良いの?・・」 「・・」 「解ったわ、そぅーね若い人にはボリュームもある、あのリュウと行った逗子のイタリアンレストランが良いじゃない、チームの皆、此れから来年こそと思っているのにビックリするしガッカリでしょうね」・「アッ!其れより監督に知らせる事の方が先でしょう!」 「そうだよな、監督には前もって話しておかなければいけないな」 心配そうにヨシ子が問いかける 「大丈夫かしら?驚くでしょうね」 「説得するより仕方ないよ」 「少し遅い時間で迷惑かもしれないが大事な事、少しでも早く知らせたら」 

 「うん、そうするよ」 家の電話から連絡を取った 「もしもし、北原さんのお宅ですか?」 当時メーカーの綺麗なコンパニオンだった監督の奥さんだろう電話に出て 「ハイ北原ですが」 「龍崎ですが、監督お願いします」 「ああ、リュウちゃんお久しぶりね、先日優勝おめでとう、家の人も大変喜んでいたわよ、今変わります」

 監督は近くにいたのだろう、受話器を受け取る音がする 「もしもし、此の間はご苦労さん、何か?」 「はい、監督俺大分考えたんですが、今年・・いや此れで、リタイア・・、レース辞める事に決めたんですが、お願いします」 「急に一体如何したんだ!話が全然分からんよ!」 「はい、充分考え出した答えです、大事な話を電話ですみません、少しでも早く知らせしようと思いまして」 「ウ~ン 何か有ったのか?・・・一方的に言われても・・」

 歳の事が頭の隅にあったのでつい 「歳ですから」 俺の冗談に、監督は考えてもいなかった意外な言葉に怒った様に声を高め 「..冗談いうな!そんな歳ではないだろう、本当に冗談ではなく如何したのだ!何か有ったのか?」 俺は神妙に 「本当にすみません!充分考えた上です!」 監督冷静を装っているが、まだ声は高ぶっている 「何だ!もう話合う余地は無い口振りだな!全く晴天の霹靂とはこの事だ!・・・考え直す事は出来ないのか?」 「はい、何処かの大きな会社の社長の息子だったら、ボロボロになっても続けられますが、このFJレース始める前から考えていて、一度でもトップでゴール出来たら、辞めようと思っていましたから、本当に良くして頂き、申し訳ありません!」

 本心は続けられるものなら続けたい、だがビジネスと割り切れば良いのだろうが、俺にはヨシ子へ背信行為と拘りが、どうしてもスポンサーを変えないかぎり続ける事が出来ない!

 余りにも突然な事に尚も監督は押し付ける様に声を荒立て 「辞める事少し早すぎるぞ、もう一年二年やってみたらどうだ?もう一度冷静に考え直せよ!」 「すみません!本当にもう」 「う~ん!何か有ったのか?出来る限り相談に乗るぞ!これから活躍出来るのに!くどいようだが本当にそれで良いのか?後で冷静に話し合おう」 俺は一切考えは変えないと云う気迫で 「いえ!考えは変りません!お願いします」 電話口で頭を下げた

 暫く監督の沈黙が続き監督自身も経験があるだろう 「..そうか残念だな!..俺と同じ悩みに突き当たったんだろう、その上を望む事に悩んだ末だな!惜しいな!リュウ、お前は俺の時よりもっとチャンスが有ると思うぞ!他のチームに移籍も出来るぞ!」 「他に移る気は無いです、今のチームが好きですから、それと他のチームに移っても俺の将来、同じ事が待っています」 監督も世界に挑戦しようとした人だ、俺の気持ちはこの短い会話で充分理解している事だろう、諦め落胆した様に 「お前の事だから、決意は変らないだろうな」

 「本当に勝手云ってすみません、結婚式の前にケジメを付けたくて、それと今年のレース・スケジュウルが終わりましたから、チームの皆に慰労の意味も兼ね、招待したいのですが来月3日か4日如何ですか?」 「うーん、そうか結婚で解った、スポンサーの件だな!前の奥さんの所だからな」 「ハイ」 「それでか!お前は決めたら変えない頑固物だから」 「本当にすみません、勝手な事云いまして」 「そうか!・・俺の方こそリュウの祝勝会開こうと思っていたんだ」 「その件も兼ねてですが、俺の友達の逗子のレストランなら多少人数や予定日など変更が出来きますから、ご足労願いたいのですが?」 「解った、・・奥さん元気か?宜しく伝えてくれ」

 「はい元気です、あとでスポンサーのお礼兼ね挨拶に廻らなくては」 それにインストラクターの事を思い出し 「あぁーそれと..出来たら、スクールのインストラクターに土日手伝わして頂きたいのですが?」 やはり俺に腹を立てずに経営者の才覚がある 「願っても無い事だよ、リュウの名前で生徒も集まるよ、スポンサーか来年は不況になりそうだな、リュウ達の式が済んだ後でゆっくり廻ろう、其のときは頼むよ」 「はい有難う御座います、お世話になった方に挨拶とお礼を兼ね挨拶に伺がわなければ、宜しくお願いします」 「おぉ、正直来年1年くらい続けると思ったよ、残念だが解った!、スポンサーの件とスクールチームとして今後もお願いに挨拶廻りしたいから、今はゆっくり休め、奥さんに宜しくな」 「はい、でわ」 監督の対応にほっとして、電話を切り

 俺はヨシ子に向かって 「監督がヨシ子に宜しく伝えてくれって」 心配そうな顔で 「それで、如何なの?」 「一応、了解得たよ、監督も同じ事で悩んだ時期があったみたい、パーティー逗子で良いって、3日か4日ヨシ子空けておいてね」 尚も心配そうに 「解っているわ大丈夫よ、でもそんなんで監督納得したの?」 「だろうな」 「だろなって!、それでいいの?」 「あーぁ、此れで夢は達成出来なかったが、何処かでケリ付けなければ、..”俺のレース人生も終わったか”..もっとガックリ来ると思ったが、意外とサッパリしているよ」 本当は自分を追い込む事でしかケリがつけられそうに無いからだ、それにそう思いたい強がりかも! 「リュウ一度出掛けて監督とちゃんと話しなさい!」 「大丈夫だよ」

R & Y 膝枕4.jpg 「本当にそれでよいの?、リュウコーヒー出来たわよ」 「うん」 コーヒーをテーブルに置き、長椅子の俺の横に並んで座った 「..膝枕する?此処に来て、お腹の赤ちゃんが呼んでいるよ、リュウ本当はレース続けたいのでよう、訂正するのならまだ間に合うわよ、私のせいにすればいいのよ、本当にそれでいいの?」 ヨシ子は俺の頭を膝の上に乗せ、念を押す様に本当に偽りの無い真の俺の気持ちを知りたかったのだろう、ヨシ子の質問には答えず

 ヨシ子の話をはぐらかす様に 「そだね、何か聞こえるかな?」 ヨシ子の膝に頭をあずけお腹の音を聞くが、未だ何も分らない実感は余りない、不思議だが俺達の新しい生命が此の中に眠っているんだ、日に々少しはお腹が大きくなって来たようだ、ヨシ子は俺の顔を覗き込み、..多分電話の内容から、俺が本気である事に察しが付いたのだが、未だに本当に其れで良いのか心配しての事だろう、やはり俺の本心を見抜いている出来るならばレースを続けたい事を、ヨシ子は徐々に話始めた

 「リュウが辞めると言ったときにね、リュウは私の為で無いと言ったけれど、以前レーシングスクールの事務所をリュウと一緒に訪ねた事があったでしょう、その時私 久美子さんが経理ノート開いていて見てしまったの」 「・・・」

 「其のとき美奈子さんのお父様の会社にスポンサーになって頂いている事初めて知ってしまったのよ、それも凄い金額!、其のこともあって 今回のリュウの気持ち本当に嬉く思ったわ」

 「そんなんじゃぁないよ・・・」 「リュウがそう云うと思っていたわ・・・でもね私も迷ったのよ 私の為に辞めるんじゃぁないかと、それもレースの事 私と結婚する前から決めていた事だったでしょう」 「・・・」 「スポンサーの事もビジネスの内と思って・・それにリュウの夢を潰したくなく何も言へなかったの、それにリュウが気使かってくれる気持ちも嬉しく 此れで良いのかと思っていたの」

 「うん..もう、いいんだ、誰のせいでも無いよ」 ヨシ子は全部自分の為にと思ったのか 「私の為だったら、いいのよ其の為にリュウの夢壊せないわよ!・・それに私のせいにされたらたまらないから!」 「そんなに思う訳ないよ!それだったらヨシ子を選ばないよ」 「嬉しいわ!でも・・」

 「・・もう良いんだよ、本当に俺自身の問題!其れだけでは無いよ、プロをやって行くには、お金集めも実力の内だよ..そうか!それで以前事務所から帰ったあとヨシ子が変だと思ったよ、珍しくあんなに荒れて..もう決めた事だから、ヨシ子に再会した時から決まっていたんだよ此れが運命だよ」 俺はヨシ子のお腹を擦り 「其れよりもっといい事あったでよう!」

 「私達の子供の事?」 「あぁーそうだよ!、ヨシ子と再会した時から漠然とこうなるって、何処かで感じていたのかも、いずれ俺自身決着をつけなければ」 「どうして?」

 「俺、本当にカーレース以外にヨシ子の事あんなに気になった事、今まで無かったよ、あの時から今の此の子と同じに様にヨシ子の子宮の中に吸い込まれ護られて何の戦いも迫害も受けず休みたかったからかな?」 ヨシ子、俺の顔をマジマジ見詰めながら 「リュウて、突然変わった、こと云うのね!話そらさないで」 「・・・」 「リュウ、逃げないでちゃんと向き合って!

 「マジだよ!、上手く表現できないが女性は男だからって ”確りしてよ” 言う人が多いが、俺って、いや男って力があっても精神が基本的に繊細で弱いんだよ、何時も頑張っていられない時も有るよ、俺は何時もヨシ子に包まれていたいのかも、初めてヨシ子と愛を交わした時の暖かみと香りかな?、凄く懐かしい気がしたんだ、遠い昔いや生まれる前からかな?其処に居たような、凄く安心出来たよ..

 やっと解ったよ!..産れてきた子宮に戻った様な、全て子供の頃の汚れの無い姿を曝け出し安らげる気がしたからだよ..この宇宙が出来、地球に初めて生物が生まれた時から子宮によって受け継がれて来たのだよ、多分この子が出来た事が神秘的で、男には無いからなお更感じるのかな?俺だけなのかな?それだけヨシ子を必要としているから

 レースを辞めようと決断したあの時、そう感じたんだ此処なら安心して全てを捨て休めるって、でも休んでいては・・不安も感じる時があるよ、本当に無性にヨシ子に甘えたくなり、反面何かに取り組まないと自分でも解らない程、不安を感じ、ヨシ子から飛び出したくなるんだ、自分でも解らないよ!」 「正直な人ね!、それは誰しもが持っているものかも知れないわね」

 又俺はヨシ子のお腹をさすりながら 「今は此の子には負けるよ!追い出されちゃったぁー!でも、海斗を知って尚更、本音で、何でも良いから五体満足で健康な子である事を願うだけ、それに愛する人を失いたくないって、痛切に感じたよ」 多分他の女性だったら、何、訳の解らない事云ってるの?頭がおかしいんじゃない、スケベでマザコン位に思うだろうが、ヨシ子は違っていた俺を理解しようとちゃんと向き合てくれた、

 「リュウって本当に変っているね、考えている事時々解らなくなるわ・・・でも私に向き合ってみると、変な表現だけどリュウの言う事解る様な気がするわ、私だってリュウに愛されリュウの全てを知りたいと思うから」 「うん」 「この世の中の誰であれ皆お母さんのお腹から産れたてきたのだからね、何かの本で子宮は宇宙と繋がっているって、子宮回帰の幻惑かな、現実と幻想が絡み合うような、読んだ事あるわ大丈夫よ、リュウの為のスペース有るから安心して、でもリュウは私の処に収まって居られる人では無いわ、時々休むだけよね?..リュウを知れば知るほど縛り付ける事出来ないわ、..此の子も、リュウの愛情一杯受けているから、大丈夫よ心配しないで」

 懸命に俺を理解しょうと思っている、ヨシ子をいじらしく可愛くさえ思えた 「その本の事は知らないが、幻想ではないよ現実にヨシ子に感じている事だよ」 「良く解かったわ、リュウは一度に色々考え疲れているの、さーぁ遅いから休みましょう」。

  翌日お昼頃、監督から連絡が入り 「リュウ、夕べの話で、本当に良いのだな! 今、結論出さなくても良いんだぞ!」 「はい、有難う御座います」 「パーティー3日でどうだ、皆本当にガッカリしていたぞ!」 「すみません、インストラクターとして土、日お願いします、それで3日の午後5時どうですか?其れで何人になりますか?」 「もちろん、スクールの顔になってむらうよ、スクールもようやく形ちに成って軌道に乗って来たところだよ、..えーと、こっちは丁度11人・・

 皆、朝から鎌倉.江ノ島を周って湘南の海を見たいって、俺と井原君は奥さんと二人、竹田君と久美ちゃん、其れと久美ちゃんの女性の友達1人、後は孝ちゃん、森田君と森田君のレースクイーンの友達2人、森田は女性に手が早くリュウの若い時と同じだ!」 「もうー勘弁して下さいよ、其れより森田君来年から乗せたらどうですか?」 「あーぁ、俺も考えていたんだ、リュウ時々見てやってくれるか?」 「ええ土日だったら構いませんよ、じゃー3日5時お願いします」

 早速、逗子のトニーの店に電話を入れ予約を取った トニーの奥さんが電話に出た、奥さんとは子供の頃から近所の付き合い良く俺達と遊んでいた、未だ米軍基地が横浜本牧にクラブ(Club)や食堂、遊戯場、エックスチェンジ(米軍の日用品や食料のスーパー兼、換金両替所Exchange)が有った頃、外人達の遊び仲間とクラブで良く遊んだ、彼女は外人好きで、名前は富士子だがちょっと二世の様な顔立ちで当時外人仲間に(エバ)と呼ばれていて、其の頃知り合ったトニーと結婚した、

 「もしもし、エバ?」 「もしもしリュウちゃん、何よ!ちょとも顔見せないで、レース凄いじゃないインターネットで見たわよ」 「まぁーね、それで今度予約したいから、3日5時、全部で14人、料理任すから安く上げてよ」 「分っているわよ、何時もリュウには安くしているじゃぁない」 「そうだよな!俺、結婚したんだ トニーには先日会っているよ」 「聞いたわよ 本当に?トニーが話していた先生とか?、また私に黙って連絡しなさいよ お祝いも出来ないじゃない」

 「ごめん、まだ式は此れから17日だから、それからレース辞めるよ」 「またぁー 今度の人の為?」 「そうじゃ無いよ俺が決めたんだ、それと妊娠しているんだ!」 「リュウが?」 「そんな訳無いだろう!」 「解っているわよ 冗談よ!それでリュウは仕込みが早いね!」 「またまた すぐからかうから!、彼女の歳がね だから早くしたの、やめたのは子供が理由では無いけど」 何か適当な理由をつけた 「リュウは 何にも言ってくれないから、とにかく分ったわバイキング形式で良い?予約トニーに言っときます」 「任したよ、其の方が人数変わっても良いよね、頼んだよ!じゃぁねトニーに宜く」

タッチおじさん ダヨ!.jpg   ストーリ【Story14】へ続きます、クリックね《http://touch-me.blog.so-net.ne.jp/2012-09-19是非お読み下さる事お願いね 


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ナベジュン

いつもお世話になっております。
ご訪問&niceありがとうございます!
by ナベジュン (2013-04-30 05:40) 

Therese♪

おかしいんです。他の人のブログには「ブログ紹介をする」ボタンがありますがおじさんのブログのプロフィール横にはボタンがありませんので紹介不可能です。
私が最初に思ったのが「ブログ紹介を拒否」しているのかと思いましたが、出来て間も無い頃からですので
それも違いますね。何故でしょう。
by Therese♪ (2013-05-11 17:41) 

ちゅんちゅんちゅん

こんばんは!
読んでいて自分もイライラしてきました(笑)
リュウ・ヨシ子さん、どちらの気持ちも
わかるので・・・イライラ(笑)
by ちゅんちゅんちゅん (2013-06-19 01:25) 

ちゅんちゅんちゅん

こんにちは!
雨ばかりですが
猛暑から解放されてホッと一息です(⌒‐⌒)
ヒトより先に
にゃんこが体調を崩しました。
温度差から風邪も流行っていると聞きます。
どうかお気をつけて秋を満喫してくださいませ♪
by ちゅんちゅんちゅん (2014-09-05 14:10) 

mimimomo

こんにちは^^
春は名のみの風の寒さや~♪ を地で行くような今日でした。
ご訪問ありがとうございます♪
by mimimomo (2017-02-07 17:52) 

mimimomo

おはようございます^^
人生って迷いが多いですね~
by mimimomo (2018-02-20 07:05) 

mimimomo

こんばんは^^
今日は寒いです。ここのところ春らしい陽気だったから、ことさら寒さを感じます。
by mimimomo (2018-03-08 19:30) 

mimimomo

こんにちは^^
鎌倉、天園ハイキングコース歩いていらっしゃいますか? わたくしは数週間うちには高尾山方面へ行きたいと思ってます^^
by mimimomo (2019-05-13 14:20) 

mimimomo

こんにちは^^
数日前の寒さからすると嘘のような暖かさ。
体調を崩しそうですよね~こう言うの。
昨日は久しぶりに、我が家の階段でエクササイズ。
右足のふくらはぎが痛いです(><;
こんなことじゃ天園さえ歩けなくなりそう・・・(__
by mimimomo (2019-11-25 14:27) 

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